知っておくと便利!印刷豆知識 入稿データ編

印刷豆知識

印刷に適したデータって?

印刷データを入稿した際、入稿データの注意点がよく分からなかったり、データ不備としてメールが返ってきたことはありませんか? 返信されたメールを見ても、耳慣れない専門用語が並べられていて、すぐには理解出来なくて困ったという経験がある方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。 実は印刷するためのデータを作成する際には、「印刷に適したデータ作成」があるのです。印刷に適さないデータをそのまま印刷してしまうと仕上がりに影響が出てしまいます。 データの再入稿になってしまうと納品日も遅れてしまう上に、さらに再入稿データも不備…となると時間もとられ焦ってしまいますね。 そんな印刷データ初心者様のお力になるべく、よくある不備から綺麗に仕上げるための簡単な豆知識までをこちらにまとめました。「印刷のことはよく分からない」「いまさら聞けない」という方などは是非お役立てください。

塗り足しとは

印刷データには
周り3mmの塗り足しが必要

印刷データの作成においてよく耳にする言葉の一つが「塗り足し」です。「塗り足し」とは、データの背景が設定されている場合など、データの周囲、つまり仕上がりサイズの外側、周り3mm部分にはみだして余分に色や画像などを設定することです。ではどうして塗り足しが必要なのか、それは印刷方法と仕上げ・製本工程を知ることでより理解することができるのではないでしょうか。

面付け・断裁

印刷会社で印刷作業を行う際は基本的に、仕上がりサイズの紙に1枚1枚印刷するのではなく、大きな紙に入るだけの数を並べて印刷をしていきます。これを「丁付け」といいます。例えば「A全判」というサイズの紙にA4チラシを丁付けする場合、A4サイズが8つ入るので、「A全判」サイズ1枚につき、A4サイズが8枚出来上がります。 印刷作業を終えた時点では、全てくっついた状態になっているので、断裁位置などを示す「トンボ」と呼ばれるマークを目安に仕上がりサイズへと断裁していきます。 1枚ごとに断裁すると途方もない作業となるため、印刷が終わった紙を機械を使ってキレイに重ねて、断裁機で一度にバスッっと切っていきます。一度に多くの紙を印刷して、重ねて断裁するため、印刷による紙の縮みや微細なズレにより、どうしても少しずつの差異が生じてしまうのです。

イメージ:重ねて断裁すると少しのズレが

そのため、縁なしでの印刷を希望している場合は、周り3mmの塗り足しがないと意図しない余白が出てきてしまいます。

イメージ:完成と思ったら白い余白が

※イラストはイメージです。
大げさに表現しています。

製本

1枚の紙に複数のページを丁付けして、断裁後、製本作業に取り掛かります。 製本の種類によって、折り作業・丁合作業・糊付け作業など様々な作業を行います。それぞれの作業の特性により、ページごとに少しずつズレが生じます。

このように、仕上げ工程が増える程どうしても発生してしまうズレに対応するため、「塗り足し」が必要なのです。 もし、塗り足しが無かったら縁なしで印刷したい箇所も意図しない余白が出てきてしまいます。 美しい仕上がりにするためには、必ず「塗り足し」を入れてください。

SHINYA先生がYouTubeで解説!

塗り足し講座

使用している画像は
添付するか埋め込みを

入稿データの確認をしていてよくある不備の一つが、使用している画像の入稿忘れによるリンク切れです。リンク切れが発生すると画像をうまく表示することができません。イラストレーターなどでリンクとして配置している画像は必ずイラストレーターと一緒にご入稿をお願いいたします。 といっても、全ての画像を同じフォルダに入れていなかったり、入れていると思ったけど、違うフォルダの画像をリンクしてたのをすっかり忘れていたりといった場合には、入稿抜けが発生します。(こちらは意外とよく見られます) そんな問題を解決するには「パッケージ」機能が便利です。「パッケージ」機能を使用するとリンクしている全てファイルを一つのフォルダに収集することが出来ます。「パッケージ」機能を使用することで入稿抜けの問題や画像を探す手間がなくなるので、とてもおすすめの機能です。

イメージ:リンク画像が入稿フォルダにない

また、イラストレーターで使用している画像を埋め込むことも方法の一つです。画像の埋め込みはリンクしている画像を入稿する必要がないため便利ですが、データが重くなったり、「埋め込み」をすることでリンクされているRGB画像などがイラストレーターで設定されている色設定(印刷データの場合はCMYK)に変換されるので、色の変化にご注意ください。

アウトラインとは

イラストレーターのご入稿は
アウトラインを忘れずに

イラストレーターなどのご入稿において、3大よくある不備に数えられているといっても過言ではない不備の一つが文字のアウトライン忘れです。どうしてアウトラインが必要なのか、それは、データをやりとりする上で付いて回る、とてもやっかいな「文字化け」という問題が発生するためです。データを制作しているPCなどに入っているフォントが、相手方のPCに入っていないと自動的に別のフォントに置き換わってしまいます。印刷会社だから色んなフォントがあるのでは?普通のフォントしか使ってないから大丈夫!とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。確かに制作から製本までを行っている印刷会社として様々なフォントを保有しているのですが、フォントというのはバージョンによってもズレが発生してしまう場合があるのです。このような問題を防ぐ為に、文字を図形化して文字化けやズレを発生させないアウトラインという処理が必要なのです。

イメージ:作成したPCと別のPCで開くと文字化けをおこしている

埋め込みフォント

PDFのフォントは埋め込みを

PDFでのご入稿で必要なのが「フォントの埋め込み」です。フォントが埋め込まれることで文字化けを防ぐことができ、印刷用データとして必要不可欠です。では、フォントを埋め込む設定をしたPDFに変換したら全てのフォントが埋め込まれるかというと、そうではないのです。フォントには埋め込むことの出来ないフォントが存在しており、フォントが埋め込まれていないと文字化けやズレが発生する可能性があり、意図しない仕上がりとなってしまいます。そこで確認したいのが、変換したPDFにフォントが埋め込まれているかの有無です。フォントの埋め込みは「Adobe Acrobat」や「Adobe Acrobat Reader」で確認することができます。作成したPDFデータを「Adobe Acrobat(Adobe Acrobat Reader)」を開いた状態で、「ファイル」→「文書のプロパティ」を開き「フォント」を確認します。すると文書で使用されているフォントが表示されます。全てのフォント名の横に「(埋め込みサブセット)」という文字が表示されていればフォントが埋め込まれているということになります。

イメージ:埋め込みフォントの確認

もし、埋め込むことの出来ないフォントを使用している場合は、文字が化けてしまう可能性があるため、使用しているフォントは全て埋め込みの出来るフォントに変更してください。

オーバープリント

K100%にご注意を

印刷におけるオーバープリントとは、見当ズレを防ぐため黒文字に多く使用されるK100%を、他の色の上に重ねて印刷する出力側の設定です。見当ズレとは一般的な印刷に使用されるCMYK各版がずれてしまっていることをいいます。CMYK各色を印刷する際に少しずつ紙の縮みが発生するため、各版にどうしても微細なずれが生じてしまいます。面付け位置や紙の種類によってズレは少しずつ大きくなります。印刷オペレーターの技術などにより最小限に抑えていますが、紙の縮みが大きくなると、見当ズレは実は避けられない問題なのです。

イメージ:オーバープリント設定をしていないと見当ずれが発生した時にずれる

※イラストはイメージです。
大げさに表現しています。

オーバープリントの設定をしていないと、例えば背景に色を設定し、その上に黒文字を配置している場合、ズレが発生することで黒文字の周りが白く抜けた状態となってしまいます。オーバープリントの設定をすることでズレが発生しても白く抜けることはなく、綺麗な仕上がりなるため、印刷会社ではこの設定が使用されています。こちらは、とても重要な設定なのですが、デメリットもあります。それはイラストやオブジェクトなどにK100%が使用されている場合、背景に配置している画像や設定している白フチなどが黒色のセロファンを乗せているように透けて見えてしまうということです。

イメージ:K100%はオーバープリント設定なので下に配置しているものが見える

※イラストはイメージです。
大げさに表現しています。

こういった問題を避けるためには、オーバープリントが適用されるK100%のみの状態を避ける必要があります。K100%に少しでも他の色を入れるなどK100%のみの状態を避けることで、オーバープリントが適用されることなく、透けてしまう状態を回避することが出来ます。 K100%に透明などの効果が設定されて白色などになっている場合も同じです。データはあくまでK100%のため、オーバープリントが適用されて予期せぬ印刷結果となってしまう事もあるので注意が必要です。

※当社では基本的にオーバープリントのお知らせや修正は行っておりません。

SHINYA先生がYouTubeで解説!

オーバープリント講座

リッチブラック

K100%はスミクロ

背景など広範囲に黒を配置している場合、K100%で作成されている方は多いのではないでしょうか。画面上ではK100%で美しい黒が再現されており、問題ないように見えますが、オフセット印刷は違います。 というのは単に黒といってもなんと300種類以上もあり、その中で印刷に使用される色はスミクロといって少し灰色がかった色をしています。そのため、画面上で表現される黒とは違った印象になります。インクのメーカー、紙の種類によっても色は違っていくのですが、画面上で表現されるような深い色合いの黒にはなりません。さらに広範囲のK100%の場合、ごくごく小さな紙粉などが印刷機につくことによってピンホールという色の抜けが発生すると、より目立ってしまいます。

イメージ:K100%の背景を印刷すると思ったような黒にならない?

※当社では基本的にリッチブラックのお知らせや修正は行っておりません。

文字や狭い範囲に黒が配置されている場合はK100%が最適なのですが、広範囲の黒の場合は、スミクロ・ピンホールを避けるため、黒にCMYを混色したリッチブラックを使用することでより綺麗な深みのある黒色を再現することが可能です。しかし、リッチブラックにもデメリットは存在します。上記のオーバープリントでもご説明した通り、見当ズレが発生することにより細い線や文字などを配置している場合、色がずれることにより白い線に色が付いているように見えたりといった問題も発生します。 上記に記載したオーバープリントを避けるための黒の配色・K100%・リッチブラックとそれぞれメリット・デメリットが存在するため、どの黒色が最適かを考慮してからデータを作成することをオススメいたします。

イメージ:当社が推奨するリッチブラック(UV印刷の場合)

PDFの位置

PDFデータは
ドキュメントの中心に

お客様からお預かりしたデータを製版する際、当社では高品質の印刷用PDFへ変換して作業を行います。出力機ではトンボではなく、設定されたページサイズを基準に位置を決めているため、イラストレーター入稿などで印刷データがページサイズの中心になっていない場合は、オペレーターがデータをページサイズの中心になるよう調整し、変換作業を行います。PDFでのご入稿の場合、入稿された印刷用PDFをそのまま使用して製版作業を行うのですが、もしPDFが中心よりズレているとズレの数値を計算し、他のアプリケーションに貼り付け、数値入力し…といった作業が発生するばかりか、ページものなど大量のデータを扱う場合、少量のズレに気付かず印刷にまわってしまう恐れがあります。また、他のアプリケーションを使用することで機能の多様化により予期せぬトラブルが発生する恐れもあり、出来れば避けることがベターです。中心よりずれた状態のPDFでのご入稿は、お客様に修正をお願いする場合もございます。PDFでのご入稿の際はデータをページサイズの中心に配置・または仕上りサイズ+塗り足しサイズにて作成していただくようお願いいたします。

イメージ:PDFのデータがドキュメントの中心になっていないと、ずれたまま印刷される可能性が…
データ作成ガイド

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